遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
本年も、週一くらいのペースでゆるゆると更新してまいりますので、よろしくお願いします。
さて、ということで、休みボケから重い腰をあげて、年明けにさっそく行ってきた美術展の所感をば。
森美術館で開催されている「宇宙と芸術展」。
開催期間は今週末の1/9まで。
かぐや姫からダ・ヴィンチ、チームラボまで、宇宙をテーマにした様々な芸術表現を展示した、宇宙の美術展である。
セクション1:人は宇宙をどう見てきたか?
セクション2:宇宙という時空間
セクション3:新しい生命観――宇宙人はいるのか?
セクション4:宇宙旅行と人間の未来
展示エリアはこれらのテーマに分けられ、それぞれに興味深い作品やインスタレーションを楽しむことができる。パンフレットにある通り、まさに「古今東西ジャンルを超えた多様な出展物」の数々だった。
宇宙というテーマは、何もロケットとか人工衛星とかいうテクノロジーだけの話ではなく、占星術や天文学、物理学、数学、哲学、宗教、SF、そしてアートと、様々なアプローチで考えることができる。人間にとって、永遠のテーマである。
(以下、今回は少々散文的になりますがお許しください。)
例えば、かぐや姫。彼女はどこから来て、どこへ帰ったのか。彼女は果たして宇宙人だったのか。そうだとするなら、なぜ彼女は地球へ降りたち、そして帰りたがらなかったのか。月を見て悲しんでいたのはなぜだったのか。そういえば月と地球の引力の関係は生命活動にも影響を与えているらしいという研究があるが、それはどこまで本当なのか。占星術は科学的根拠を持ちうるのか。
考えれば考えるほど想像は広がっていき、ワクワクする。
あるいは、宇宙そのものの仕組みもミステリーに満ちている。宇宙誕生の謎、惑星も光も吸い込んでしまうブラックホール、惑星はどうやって生まれるのか、地球はどうしてできたのか、私たちはどこから来たのか。月から火星、銀河系の外へと、私たちは一体どこまで行けるのか。地球外生命は存在し得るのかどうか。
宇宙は「問い」に富んだ魅惑の物件だ。
ガリレオ・ガリレイの地動説を皮切りにみるみるうちに発展してきた宇宙研究は、今や月面基地や火星移住、宇宙旅行などというテーマを真剣に考えられるほどにリアルになった。今の私たちにとっては、宇宙科学とは、極めて現実的で具体的でロジカルなイメージになっている。
しかし古代の人々にとっての宇宙研究は、今の私たちが不確かなものと捉えがちな占星術や宗教であったわけで、つまり宇宙を知ろうとすることは人間の哲学そのものでもあったわけだ。展示物にもあった曼荼羅がその良い例だろう。思えばギリシャ神話だって、星座と密接な関わりを持っている。
「人間はどこから来たのか」という文系的な哲学が、人間に空を向かせ、様々な思想・宗教を生み出して答えを探り続けてきた。そしてその探求心はやがて物理的な技術発展を促し、より具体化した学術研究として理系的な物理学や数学、天文学を生み出した。
こういう視点で考えてみると、哲学と物理学は同ジャンルのものとも言えるわけで、文系理系などというくくりはそもそも概念として成立しないようにも思えてくる。
実際のところ、今回の美術展に一緒に行ってくれた人は、大学で物理学を研究していた人(ちなみに私は専らの文系)だったので、例えばニュートリノがアートとして表現されているのを見て、多大な感銘を受けていた。それを見ても、文系だとか理系だとか、関係ないのだと改めて思うのだ。
マクロとミクロという観点で考えてみても、宇宙は、天文学としてみれば気の遠くなるほど巨大で長くて広いものだが、哲学としてみれば、今度はその問題は人間の思想の中に内在され、極めて個人的でミニマルなものにもなる。
こうやって、考えを広げていくと収集がつかなくなってパニックを起こしそうになるが、そんなとき、それらを感性としてまとめあげることのできる手段としての芸術表現は、ある意味救いだ。
アートというのは五感体験であり、率直で端的なものだから、複雑な問題を感覚的にとらえるには非常に便利なのかもしれない。
アート作品から宇宙について考え、思考はまさに宇宙のようにどこまでも無限大に広がっていき、それがもう一度作品に回帰してまとめあげられる。
こういう思考体験は久しぶりで楽しかった。
大人になると、つい自分の領域以外の部分は思考の範疇外にしてしまうけれど、すべては繋がっていて、意外な関連性が生まれると子供のようにワクワクする。
2017年も、この感覚は忘れずにいたいものですね。
宇宙と芸術展、あと3日ですが、みなさんぜひ足を運んでみてください!
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以下、展示物を見ながら思い出したこと、思いついたこと、キーワードなどをメモ。
哲学、『火の鳥』、『風の谷のナウシカ』、ニュートリノ、ダン・ブラウン『天使と悪魔』、ポアンカレ予想、宇宙の音(映像作品をヒントに)、八咫烏、スターウォーズ、ゼロ・グラビティ、『星を継ぐもの』、天地創造、宗教、曼荼羅、ギリシャ神話 etc.