Art Inspirations

素人作家のメモ箱

アートと活字を愛する作家の卵が運営するブログ。

ジャンルを超えて、広義の「アート」から得た様々なインスピレーションやアイデアを文章で表現していきます。
絵画、彫刻、インスタレーション、音楽、ダンス、デザイン、ファッション、建築などなど。





カタストロフと美術のちから展|わたしたちがアートでできること

 

アートで、私たちは何ができるか。

戦争、テロリズム、天災、人種差別、性差別、ヘイトクライム、経済格差・・・
9.11に代表される同時多発テロ事件、そして3.11を経て、社会の変容の只中にある今の時代のなかで、つくるということ、表現するということ。
それは一体どういうことか。

そんな問いを投げかけたセンセーショナルな展覧会が、森美術館で催されている。

 

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www.mori.art.museum




会場には、世界中で活躍するアーティストたちの渾身の作品が並ぶ。


ゲリラ的なアートワークで社会を逆撫でし、度々話題をさらってきたChim↑Pomは、原発の目と鼻の先に、日の丸が放射能へと化した白旗を掲げる。

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Chim↑Pom 《REAL TIMES》

 

かたや、デジタル数字を使った現代アートで知られる宮島達男氏の作品は、切なる祈りのようで、ただただ美しい。

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宮島達男 《時の海-東北》

 

そのほか、カテジナ・シェダーやスウーンは、自らの作品を通して、何かを表現しアートとして昇華することで、絶望から抜け出すことの証明を果たした。
また、以前、震災後に見て個人的に大きな衝撃を受けた池田学氏の作品もあり、とにかく圧巻だった。

 


そして、展覧会のプロモーションでも話題の、オノヨーコさんの参加型のインスタレーション

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オノ・ヨーコ 《色を加えるペインティング(難民船)》

平和へのメッセージを、訪れた人々が青と白のチョークで刻み、またその上に別の誰かがことばを記していく。
ことばは、ひとつひとつ沈殿していき、部屋の真ん中に打ち捨てられた難民船は、いつしか、人が生み出す美しいことばの海に、深く深く潜っていく。


子供が描いたらくがきも、人知れず訪れた著名人のサインも、外国から来た誰かが記した世界の言葉も、自分を生きるのに夢中な若者の相合傘も、不躾な誰かが書きなぐった汚い言葉さえも、すべてが等しく「海」になっていく。

それらはすべて、人がつくり出したアートの原石だ。

 

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展示室内に記されたことば


つくることは、生きること。


アートがこの世界につくられるということは、それだけで、希望なのだと思う。

たとえそれが、大惨事を表象するものであっても、苦しく虐げられたものであっても、身を削るような表現のなかに、きっと何か大きな力が宿るはずだ。

それがアートそのものであり、私たちがアートでできることなのかもしれない。

 



最後に、オノヨーコの参加型の作品に、私もことばを記してきた。

以前ベトナム旅行中に偶然出会った、とあるアートポスターに描かれていたことばである。

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"Make art, not war."

 


第二次世界大戦のさなか、「絵は戦争の道具である」とピカソは言った。

怒りと祈りが入り混じった、痛々しく、激しいことばだ。

スペイン内乱の大惨事を描いた大作『ゲルニカ』の前で、「これを描いたのはあなたたちだ」と兵士に向かって言い放ったというエピソードはもはや伝説になりつつあるが、

芸術家ピカソは、惨禍が続く時代のなか、惨事そのものをアートに写すことで「カタストロフ」と闘った。

 


芸術で天災を防ぐことはできないが、立ちあがる力を再び灯し、先導することはできる。

死をよみがえらせることはできないが、失った悲しみと怒りを代弁することはできる。

戦争を止めることは難しいが、血を流すことなく、戦争そのものと闘うことができる。

絶望はなくせないが、希望を託せる。

アートはときに、旗となり、武器となり、祈りになる。

それはきっと、世界を動かし、変えることもできるはずだ。

 


アートの無限大の力を、私は強く、信じたいと思う。

 

 

www.mori.art.museum

 

 

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カタストロフと美術のちから

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ピカソの戦争 《ゲルニカ》の真実

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暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

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