今週は何年かぶりに盛大に風邪をひき、家に閉じこもってうんうん唸っていた。
ようやく回復してきたが、まだちょっとフラフラして遠出するほどの体力もなく、でもずっと家にいるのも悔しい。そこで近所の図書館でリサイクル市をやっているのを思い出し、リハビリがてら足を運んでみた。
ところが、狭い集会所を会場にしているからか、入る人数を規制しているようで、図書館内にずらりと行列ができている。
まあ破格の値段で本が手に入るのだからいいかと思って並んでみたが、行列は一向に進まない。
だんだんイライラしてきて、暖房が効いた会場はどんよりと重たく、病み上がりの体には結構こたえる。
結局、ものの10分で気分が悪くなり、逃げるように家に舞い戻った。
戻ってベッドに横になり、一息ついてから、冷静に考えてみた。
そもそも、なんであんなに人が並ぶんだろう?
古本を10円でたくさんゲットできるから?
確かに私自身も並んだ動機はそうだったけれど、巨大なトートバッグに山ほど本を詰め込んで去っていく人を見て、不可解な気持ちになってしまった。
そんなに積んでどうするんだろう。本当に読むのだろうか?
読みたい本があれば、たとえお金がなくても、いつでも図書館で借りられるのに?
そこまで考えて、おっ、と気付いた。
最近、またミニマリズムの本を読み返していたので、その効能かもしれない。
ミニマリズムとは、不要なモノを手放して、モノによって規定されない豊かさや幸せを手に入れようとする思想や生活スタイルのことを言う。
初めて読んだときはまさに目からウロコで、昔は紙袋ひとつ捨てられなかった私が、あっという間にモノから解放されてスッキリした暮らしを送れるようになった。
考え方さえ身に付けば、ミニマリズムはあっけないほど簡単で楽しい。
ただ、私の場合、本だけはどうしても削れなかったので、ミニマライズを免除する代わりに、あるルールを設けた。
読みたいものがあれば、節約は気にせず買ってよし。
読み終わったら、本棚に並べるのは本当に気に入ったものと執筆に必要なものだけ。ただし、小ぶりな本棚に収まることが条件だ。それより溢れたら、何かを手放して、他の誰かのために売るか譲る。
積読本に関しては、読みたい本を並べておくのはワクワクするので許容することにして、これもベッドサイドに収まるまでが上限。
そうやってざっくりしたルールを設けたら、本を買うのもより楽しくなり、本を手放すのも惜しくなくなった。
そのルールを今一度思い起こし、再び、リサイクル市の行列を考えてみる。
確かに、10円で本をゲットできるのは嬉しい。
普段なら買ってまで読まないような本があれば、一期一会できっと楽しいだろう。
でも、家には読みかけの本が数冊、積読本が10冊弱。さらには図書館で予約している返却待ちの本も10冊以上、読みたい本のリストに至ってはゆうに100冊超え。
読書候補はそれこそ列をなして私を待っているのに、この行列を並んでまで、まだ必要だろうか?
答えは明らかだ。
いくら本の虫でも、世界中の本を読むのは不可能だ。
世界中どころか、小さな図書館の蔵書でさえ、一生かかっても読みきれないだろう。
それがたとえプロの作家でも、作家志望の読書家でも、生涯で読める本の限度は同じくらいでしかないはず。
行列に並ぶのに時間を費やすくらいなら、今読んでいる本をどんどん読み進めればいいし、昔読んだ良本を熟読して研究して、執筆の構想を練ればいい。
そして必要だと思ったら、惜しみなく新しい本を探しに行けばいい。
もちろん作家を目指すならとにかくたくさん読むのは当然だが、読む行為そのものに囚われて、次から次へと新しい本をゲットするために体力と精神力を費やし、肝心の執筆活動が疎かになっては本末転倒だ。
夢を叶えるために減らす、とミニマリストたちは口を揃えて言う。
それはモノに限らず、情報や知識に関しても、読書や執筆に関してもあてはまる。
例えば、幅広い知識は必要だが、まさに二兎追うものは一兎も得ずで、限度を超えて欲張りすぎると、どの知識も中途半端なままで止まってしまう。
ものを書くからといってあまりに詰め込みすぎ、知識でがんじがらめになって、創造性が奪われては意味がない。
作品そのものも、情報を取り入れすぎると収集がつかなくなって煩雑になり、作品に無駄が出る。
つまり、上手く取捨選択して「余白」を作らなければ、良質な何かを生み出すことはできないのだ。
こうみると、創作者にとって、情報収集と創作のバランスと、ミニマリズムの思想はとても親和性が高い。
…と、そんなことをベッドの中で考えて、起き上がっては本棚を漁り、関連書籍を読み返しながら、気が付いたらもりもりブログが書けるまでに回復していた。
行列に並んで体力を使うより、よっぽどいいリハビリだ。
結局のところ、病み上がりの身体には、無理して獲得する新しい本より、部屋にある「自分に必要な本」が一番効いた。
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ミニマリズムの関連書籍
ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -
- 作者: 佐々木典士
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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私が初めて読んだミニマリズムの本。考え方や生き方がぐるっと変わりました。片付け本というより、もはや哲学の域。現代の日本人特有の生活感覚に合った、無理のないミニマリズムがとても共感できます。
世界中でミニマリズム旋風を巻き起こしたベストセラー。
二十代ならこれ。読みやすく、言葉もシンプルなので、どかんと響きます。早いうちに読んでおいてよかったと今でも思う一冊。
こちらはモノというより、心のミニマリズム。ドミニック・ローホーさんの本はどれも良いのでオススメ。
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