Art Inspirations

素人作家のメモ箱

アートと活字を愛するアマチュア作家が運営するブログ。

ジャンルを超えて、広義の「アート」から得た様々なインスピレーションやアイデアを文章で表現していきます。
絵画、彫刻、インスタレーション、音楽、ダンス、デザイン、ファッション、建築などなど。





創作のマネジメント|自己満に陥らずに書き続ける方法

ご無沙汰しております。

怒涛の追い込みの末、10月末日に無事に群像新人文学賞に応募でき、しばし放心しておりました。

ということで、今回は色々と思うことがあり、いつもと少し雰囲気を変えて、執筆について語ってみようかと思います。

 

 

◆今回の応募の反省点は、とにかく計画不足 

もうこれまで何度も、小説をひとつ完成させて文学賞に応募するということを繰り返していますが、完成後に振り返ると、毎回いろんな反省点が出てきます。

物語構成の甘さ、表現の重複、登場人物の設定や造形の不足、安易な言葉選び、句読点の位置、表記のブレ、会話文の無駄、などなど、見返せば見返すほど粗ばかりで情けなくなるくらいです。

その中でも、今回は何といっても、計画の甘さが一番の反省点でした。

 

前作を完成させて応募したのが3月末。

それから次の構想を練って、10月末までに短編を完成させるつもりでした。

しかし、なかなか構想が決まらず、ずるずると先延ばしになり、気付けばもう夏真っ盛り。

大枠のアイデアはあったものの、それをストーリーに組み立てるのに難航し、建築で言えば、土台まで作ったけど、設計書ができていなくて建設がストップしているような状態でした。

8月頃になって、さすがに追い込まれて火がついたのか、やっとストーリーが見えて構成が整いましたが、結局筆が進み始めたのは9月からという瀬戸際の闘いに。

挙句の果てに、2ヶ月間で詰めに詰め込んで書きまくり、間を置く暇もないまま大急ぎで推敲し、締切前夜に息も絶え絶えに投函、という散々な結果になってしまいました。

 

 

◆対策1:ポイントを体系化してセルフチェックする 

では、今回のようなことを防ぐために、どんな対策をしておけばよかったのか?

 

試しに、創作活動において、今までなんとなーく気を付けていたポイントを書き出して、マネジメントという観点で整理してみました。

 

①時間のマネジメント

・締め切りはいつか。(マイルストーンを置く)

・そこから逆算して、いつまでに完成し、どのくらいの期間推敲が必要か。(スケジュールを立てる)

・毎日どのくらいの時間を執筆に充てれば間に合うか。(スケジュールの詳細化、作業時間を見積もる)

・本業が忙しくなったり、思わぬイベントで執筆が滞った場合、間に合わなくなるリスクはないか。(バッファを設ける)

 

②品質のマネジメント

・どのタイミングで執筆を中断し、見直しをするか。(こまめな定期点検)

・どこまで、どのように修正すべきか。(修正によって矛盾が生まれないように)

・予め登場人物や舞台設定がしっかり準備できているか。(部品のチェック)

・完成後、何回、どのくらいの期間を設けて推敲するか。(最終テスト、品質チェック)

 

 ※推敲していく中でもさらに細かなポイントがありますが、ここでは割愛。

 

③環境のマネジメント

・書こうとしている題材に関する情報・資料は十分か。

・貯めているアイデアにいつでもアクセスできるか。

・原稿のデータ管理はきちんとできているか。

・不明点があったらすぐに調べられる環境になっているか。

・執筆に集中できる環境が整っているか。

 

④自分自身のマネジメント

・作品の軸になる考え方にブレがないか。

・自分の考えやモチベーションを保つための工夫はできているか。

・インプットの時間を取れているか。

・体力的に無理なスケジュールになっていないか。

・他の予定との兼ね合いが取れているか。

・リフレッシュする時間を取れているか。

 

もちろん、これらのポイント以前に、「書きたいコンセプトや物語の主旨が明確になっていること」が大前提です。

 

こうして文字にして並べてみると、いかに一人で黙々と文章を書いているだけといっても、結構色々なことに気を配りながら進めているんだなあと実感します。

今回の応募では、特に①時間のマネジメントができていなかったということですね。。

一見、感情の吐露のように思われがちな創作活動においても、こうやって体系立ててみると、何が不足していて、どこが詰めが甘いかが見えてきます。

 

 

◆対策2:作品のテーマとは別に、活動自体の課題を設定する

反省点は山ほどあったものの、達成できたこともありました。

それは、原稿用紙70枚程度の短編とはいえ、(構想を練る期間を除いて)ほぼ2か月間で1つの作品を仕上げられたということ。

何とも低レベルな達成度ですが、これまで執筆速度が遅かった私にとっては大きな進歩でした。

 

いわゆる五大文芸誌の新人賞に本格的に応募し始めたのは、今回を入れて3回目ですが、振り返ってみると、これまでの作品でも、毎回何かしらの課題を設定してきました。

まず1作目の課題は、語彙力や表現力、表現の幅を身に付けること。

辞書や類語辞典を片手に、一語一語をじっくり吟味しながら書いた結果、散文的な小説になってしまって文学としてはイマイチでしたが、この作品で一気に語彙力や表現力が身に付いた気がします。

次の2作目は、普通の話を書けるようになること。

それまで好き勝手書いていたので、基礎はちゃんとできてる?と不安になったのが動機でした。小説の書き方を本や講座でちゃんと勉強して、安易にファンタジーに逃げずに、「普通の人」の生活や心の動き、街の様子をしっかり書けるか、ということを研究しました。

結果としては、なにしろ「普通」の話なので新人賞には到底届かずでしたが、少しは地に足のついた文章が書けるようになったかな?という感触はありました。

 

そして今回の課題は、執筆のスピードアップと、短編を書けるようになること。

これまでは、中・長編をゆるゆるとマイペースに書いていましたが、もうちょっと気を引き締めて、もっと精力的に執筆に取り組みたい、そのためにも同時進行で複数の作品を書けるようになりたい、と思うようになり、ある程度の時間の制約を設けた上でどこまで書けるか、という実験を試みました。

内容はともあれ、この点だけでいえば、まずまずの結果だったのではないかと思います。

 

創作活動というのは、正解がなく評価もしにくいので、モチベーションを保つのが大変です。ましてや、文学賞に応募していると、ダメもとだったとしても、落選するといちいち落ち込みます。

そこでめげないためにも、作品の内容とは別の課題を設定しておいたのは有効でした。

 

さらに、これまでの活動の変遷を客観的に分析してみることで、強みや弱みが見えてきて、次の作品へ向けた改善点や対策を考えるのにも役立ちました。

私の場合だと、

語彙力の習得→小説の基礎を固める→執筆速度をあげる

とここまできて、次は全部を一作品でクリアできたら、ようやく作品の内容自体を磨き上げる段階に入れるかも?

といった具合に、ステップアップの作戦を練ることができます。

道のりは長いけど、進歩や学びを(たとえこじつけでも)発見できると、俄然やる気が湧いて面白くなってくるものです。

 

所詮は自己評価でしかないので、傍から見ると口ほどにもないでしょうけど、少なくとも、創作活動を地道に続けていくためのモチベーションを保つには効果がありました。

 

 

◆自由だからこその「自律」 

小説を書くことは、映画のように大勢の関係者でひとつのものを創り上げるのとは違って、極めて個人的で、自由な活動かもしれません。

しかしそれでも、読むに値するものを生み出すためには、自分と作品をしっかりとマネジメントすることが不可欠です。

実際私も、

1.ポイントを体系化してセルフチェックする

2.作品のテーマとは別に、活動自体の課題を設定する

この二点を実践してみただけでも、随分と客観的に自分の創作活動を分析することができ、モチベーションの維持にもつながりました。

 

執筆は個人的な活動なだけあって、読者を忘れてついつい自己満に陥ってしまい、たやすく「イタイ」「恥ずかしい」作品に堕ちてしまいがちです。

かといって、ストイックに自分の作品をダメ出しし続けても、今度は心が折れて何も書けなくなってしまいます。

このジレンマに上手く対処するためにも、客観的に、でも程よくポジティブに、自分の筆力と精神力をコントロールしていかなければなりません。

何でもアリだからこそ、自分を律する。

それができて初めて、自由に書けるようになるのではないでしょうか。

 

 

 

さて、偉そうにいろいろ書きましたが、言うは易く行うは難し。

まだまだ道半ばですが、懲りずに、あれこれと試行錯誤しながら今後も続けていきたいと思います。

 

 

***

こちらでも、創作について思うことを書いています。

artinspirations.hatenablog.com