Art Inspirations

素人作家のメモ箱

アートと活字を愛するアマチュア作家が運営するブログ。

ジャンルを超えて、広義の「アート」から得た様々なインスピレーションやアイデアを文章で表現していきます。
絵画、彫刻、インスタレーション、音楽、ダンス、デザイン、ファッション、建築などなど。





WIREDカンファレンスと「私たちのエコロジー」展|AI時代の"アートとは何か"を考える

随分前のことになるが、昨年12月、雑誌「WIRED」が主催するカンファレンスに参加した。 wired.jp 終日イベントのうち午後は「Sci-Fiプロトタイピング」ワークショップの方に参加していたので、その間聞き逃したトークセッションを、今更ながら少しずつアーカ…

キュビズム展 美の革命|境界線をゆるがす思想・哲学

大人になって哲学を勉強しなおしたいと思うようになり、最近、手始めに現代思想入門という本を読んでいる。 現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon まだ途中だが、今のところ興味深いと思ったのが、ドゥルーズだ。 一部を引用すると、 …

ワールド・クラスルーム―現代アートの国語・算数・理科・社会|大人にアートが必要な理由

私が好きな美術館トップ3の中に入る美術館のひとつが、森美術館。 常設展示を持たず、企画展に特化した美術館としてはさすがというべきか、毎回企画展がものすごく面白い! 特に、現代アートや建築に強い印象があって、私の好みドンピシャの美術館なのだ。 …

ピカソ 青の時代を超えて|人生と作品について思うこと

これまでの長い美術史のなかで、誰が一番好きかと問われたら、迷わず「ピカソ」と答える。 そのくらい、実はピカソファンなわたくし。 ポーラ美術館の開館20周年記念展『ピカソ 青の時代を超えて』展に行ってきた。 目次 ポーラ美術館開館20周年記念展:ピカ…

川崎市岡本太郎美術館|「爆発」の根源にあるもの

目次 川崎市岡本太郎美術館 モニュメント「母の塔」 館内へ 「夜」と「まひるの生物」 彫刻作品は樹のモチーフが多い 根源にあるもの 番外編:ミュージアムショップ 関連:草間彌生とも通じるものがありそう? 関連書籍 ここ数年、仕事や勉強やいろんなこと…

宮島達男 クロニクル 1995−2020|数字はアートになり得るか?

目次 数字はアートか? 宮島作品との出会い:森美術館「カタストロフと美術のちから」展 再会:東京都現代美術館 コレクション展 宮島作品が現代人を魅了する理由:千葉市美術館「宮島達男 クロニクル 1995-2020」 数字とは何か? 【参考】森美術館「STARS展…

鈴木昭男―道草のすすめ|「佇む」という感性のチューニング

環境音に「耳を澄ませる」ということを、あまりしなくなった。 外を出歩くときは、できるだけ外界からのストレスをシャットアウトするために、耳にイヤホンを押し込み、視界はスマホのスクリーンの世界に潜ったまま、目的地まで、まっすぐ足早に歩く。 満員…

オラファー・エリアソン―ときに川は橋となる|知覚できない世界の美を予感するということ

なんだか、ここ数年、人類という種の存在を見つめ直すターニングポイントの上に立っているような、ただならぬ雰囲気を感じる。 少し前、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』がベストセラーになった。 最近は、サステナビリティを意識した企業の取…

シュルレアリスムと絵画|思考に風景は必要か?

ダリ、マグリット、タンギー・・・しばしばシュルレアリスム絵画として分類される画家たちの絵を見ていると、思うことがある。 それは、私たちが思考するとき、そこには果たしてどんな「風景」が広がっているのか?ということだ。 そもそも、思考や精神とい…

未来と芸術展|無機物が有機物化した世界、人類はどこへいくのか

六本木の森美術館で開催されている「未来と芸術展」へ行ってきた。 www.mori.art.museum 2018年に開催された「建築の日本展」とも通じる部分もあり、森美術館の集大成のようにも感じられる企画展だった。 特に、人の暮らしや文化を形作る都市・建築の可能性…

新・北斎展|世界に誇る日本絵師の虜になる

日本は言うまでもなく、世界でも知らない人はいない天才絵師、葛飾北斎。 海外では“The Great Wave”という名で親しまれる『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』はあまりにも有名だ。 また、浮世絵だけでなく、コミカルでユーモラスな『北斎漫画』も、よく知られた作…

カタストロフと美術のちから展|わたしたちがアートでできること

アートで、私たちは何ができるか。戦争、テロリズム、天災、人種差別、性差別、ヘイトクライム、経済格差・・・9.11に代表される同時多発テロ事件、そして3.11を経て、社会の変容の只中にある今の時代のなかで、つくるということ、表現するということ。それ…

建築の日本展|空間をつくる、未来をつくる

森美術館の美術展は、いつもセンスがいい。 その内容の濃さは、美術鑑賞というにはあまりに味気ない、もはや哲学の域だ。 以前の「宇宙と芸術展」も素晴らしかったけれど、今回の「日本の建築展」も、期待を裏切らない面白さだった。 www.mori.art.museum 古…

ルドン―秘密の花園|いのちとことばの芽吹き

二カ月ほどものを書くことから離れていて、随分とご無沙汰になってしまった。 スランプというのか、どうにもこうにも言葉が出てこず、ただただ飢えたように読むばかりの二か月間だった。 自分のことばを文字で綴っていくという行為そのものが、まるではらわ…

谷川俊太郎展|人の心はことばに育てられる

詩人・谷川俊太郎さん。 ことばの匠、というとちょっと似合わない、優しくて穏やかで聡明な、ことばのご友人。 今振り返ると、絵本や教科書や、いろんなところに谷川さんのことばが散らばっていて、私は知らず知らずのうちに、この方のことばに育てられたの…

無音の風景

昨日は、大雪による混雑で長時間ホームで待たされ、凍えながらやっとの思いで帰宅した。 あまりの寒さにろくに景色も楽しめなかったのが悔しく、温かい家の中から外を覗いてみたら、見事な雪景色だった。 しんしんと降る雪は、雨と違って音を立てない。 家屋…

土地の風景を糧にする|田舎と都会で、創作について考えたこと

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。 本年もゆるゆると更新してまいりますので、引き続きよろしくお願い致します! *** さて、年末年始は、数年ぶりに田舎に帰り、懐かしい風景と変わらない友人たちに心癒された連休だった。 故郷の何気な…

アートの集大成「オットー・ネーベル展」から学ぶ創作のヒント

先週末、最終日のオットー・ネーベル展に駆け込みで行ってきた。 少し遅くなってしまったが、色々と学ぶことが多かったので、備忘のために考えたことを書き留めておこうと思う。 www.bunkamura.co.jp 「知られざるスイスの画家」とポスターにもあるように、…

読書と創作のミニマリズム

今週は何年かぶりに盛大に風邪をひき、家に閉じこもってうんうん唸っていた。 ようやく回復してきたが、まだちょっとフラフラして遠出するほどの体力もなく、でもずっと家にいるのも悔しい。そこで近所の図書館でリサイクル市をやっているのを思い出し、リハ…

迷子の特権|美を見つける歩き方 in 京都

自慢ではないが、私はかなりの方向音痴だ。 入り組んだ道になると一体自分がどこから来たのかすぐに分からなくなるし、「こっちかな?」とあてずっぽうで歩くと、だいたい目的地とは逆の方角に歩き出している。 だから街を歩くときは、GoogleMapがないとどこ…

物語の在庫|日常に生じた「溝」をキャッチする

『表現のたね』という本を読んだ。 作家でありミュージシャンでもあり、自称”日常編集家”だというアサダワタルさんの著書である。 この本を買ったのはもう二ヶ月以上も前で、ブックイベントに初めて足を運び、本屋さんとの楽しい会話につられてついつい買っ…

創作のマネジメント|自己満に陥らずに書き続ける方法

ご無沙汰しております。 怒涛の追い込みの末、10月末日に無事に群像新人文学賞に応募でき、しばし放心しておりました。 ということで、今回は色々と思うことがあり、いつもと少し雰囲気を変えて、執筆について語ってみようかと思います。 ◆今回の応募の反省…

匂いたつ絵画|ヴラマンク展ー絵画と言葉で紡ぐ人生

先日、山梨県立美術館で開催されているヴラマンク展へ行ってきた。 ヴラマンクは、マティスやドランと並んで、フォーヴィズムの画家として知られる。 そのヴラマンクが、画家でありながら、優れた文筆家でもあったと聞き、ビビッときた。 有給休暇の当日朝に…

芸術のはざま|演劇はなぜなくならないのか

先週末、縁あって、ひさしぶりに舞台を見に行く機会があったので、演劇という芸術について色々と考えた。 考えてみると、演劇というものはつくづく不思議だ。 脚本・演出・監督・音響・照明・衣裳・役者と、ひとつの作品を作り上げるのに必要な仕事は映画と…

矛盾と越境|芸術の臨界点をどう超えるか

最近、芸術と言われるものが、総じて頭打ちになっているような気がしてならない。 専門家ではないのでこれは個人的な感覚に過ぎないのだけれど、それぞれの芸術の在り方や定義、あるいはそれぞれの「枠」に納まってきたものが、飽和状態になっている、という…

文字だけの世界に回帰する

現代は、特に東京という街は、情報がとにかく多い。 人も、文字も、デザインや絵や音楽も、いたるところに充満していて、それはつまりインスピレーションが山ほど湧くということでもある。 否が応でも毎日たくさんのインプットをしているのだから、書きたい…

暮らしにBGMを

映画やドラマに音楽があるように、日々の生活にも、BGMがあると楽しい。 すでに日が高く昇った休日の朝は、クラシックをかけると途端に優雅なコーヒータイムになるし、しゃれた洋楽をかければ、その日はまるで、雑誌に載ったどこかの女優や文化人のように…

古いものに身を包み、新しさのための「余白」をつくる

昔は飽き性で新しいもの好きだった私が、いつの間にか、古着ばかり買うようになっている。 新品を買うときは、よっぽど一目ぼれした服か、あとはユニクロくらい。 大人になって、せっかく自分で稼げるようになったのにおかしな話だが、休日に使う鞄や靴もほ…

暗がりを知るということ

仕事も趣味も目ばかり使うくせに、昔から目が弱いので、寝る前には間接照明やキャンドルに切り替えるようにしている。 枕元に積んである本をあれこれ拾い読みしながら、眠気が来るのを待つ。 最近、常々気になっていた、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読み始め…

ジャコメッティ展|視覚と精神に見えるもの

ついに、念願のジャコメッティ展へ行ってきた。 学生の頃にシカゴ美術館で見てからというもの、その独特の存在感が忘れられず、たちまちファンになったジャコメッティ。 没後半世紀の大回顧展とあって、大満足の展覧会だった。 (私がジャコメッティを好きに…